学会長挨拶

医療法人杏仁会 松尾内科病院 リハビリテーション科
中野 徹
2020年1月15日、わが国で新型コロナウイルスの感染がはじめて確認されました。最初は、対岸の火事のように思っていた新型コロナウイルスが、全世界で猛威をふるい、2020年は私たちが経験したことがない1年となったことは、改めて説明するまでもないことでしょう。国民のくらしは大きく変化しました。テレビやインターネットで表示される “感染者数”や“死者数”という数字に憂い、感染症の専門家の語る“対策”に戸惑い、緊急事態宣言やGo Toトラベル事業などの政府の“政策”に従いながらも疑い…もちろん、広島県理学療法士会の会員のみなさんも例外ではないと思います。日々、病院や診療所、施設、養成校などで、臨床や指導や教育にあたっている会員のみなさんは、今、このときも悩み、苦しみ、不安に感じ、疲労が蓄積されていることと思います。研修会や学会、会議、打ち合わせ、勉強会、交流など、多くのことを自粛しなければならず、2020年11月29日に開催を予定していた「第25回広島県理学療法士学会」も延期となりました。この2020年、私たちの“LIFE”は大きく変わったのではないでしょうか。
第25回広島県理学療法士学会では、学会のテーマに“LIFE”ということばを入れました。この“LIFE”には、「生命」、「生活」、「人生」という日本語ではニュアンスの違うことばをすべて表すことができ、私たち理学療法士が常に考えていかなければならないキーワードではないかと考えていました。しかし、「コロナ禍」ということばが流行語となる現在、私たちは常に「生命」の危機を感じながら、日々変化していく「生活」のことを常に念頭に置き、仕事も余暇も含めた「人生」について考えることとなりました。私たちは、患者さんや利用者さんの”LIFE“を支援するだけではなく、一人の理学療法士として、一人のヒトとして”LIFE”について考える機会を得ることができたのではないでしょうか。
21世紀になり、20年が過ぎました。新しい元号となり、令和という響きにも慣れてきました。広島県理学療法士会が生まれて50年の歳月が流れました。そんな中、予期せずして、私たちの“LIFE”を脅かしつつも、見直す機会が与えられました。私たちひとりひとりが経験した“LIFE”について語り合い、共有することができればと思います。
2021年12月5日、みなさまと充実した時間を過ごせることを心より願っております。